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五〇、五五、五七で辞めると、さらに退職金の割憎があるので、退職者にとっては大きな支援となるはずだ。

どのくらいのメリットがあるかといえば、退職金が自己都合退社の約倍になるのである。 それなら、いま流行の早期退職優遇制度ではないかと思われるかもしれない。
しかし、このセカンドライフ支援制度には、人員を削減するという意図はまったくなく、本人の自己申請を前提とし、厳しい審査をパスした者にかぎって適用される。 その具体的な手順は、まず転職したい、あるいは独立したいという希望者が第の人生の計画書を提出し、セカンドライフ相談室の相談員と話し合うところから始まる。
相談員は、申請者が第の人生に踏み出そうと考えた動機、真剣度、計画の実現性などをチェックし、計画が失敗するおそれがある場合は、退職を思いとどまるように説得する。 その話し合いが煮詰まったところで、今度は制度を適用するかどうかの審査委員会が聞かれる。
いまでいうベンチャー起業である。 提出された計画書では、自分たちのもっている得意な技術、想定される受注先と受注目標、売上計画、資金計画などが五年先まできっちりと書き込まれていた。
こういう具体性のある挑戦には、会社は支援を惜しまない。 Fさんの計画は承認され、念願の独立を果たすことができた。

いまではY電機の取引先となって事業を発展させている。 このほか、娘夫婦といっしょにアメリカでテコンドーの道場を聞いたり、ラーメン屋さんを始めるなど、職種はさまざまだが、二〇〇〇年四月までに一九七人が応募し、最終的に八〇人が適用を受けて第の人生に向けて旅立っている。
この制度を紹介したのは、終身雇用制のよさを活かしていくためには、定年にいたる前にいくつかの間門を用意しておく必要性を認識していただきたいからだ。 それぞれの年齢ポイントごとに自分の人生を見つめ直す。
このまま勤めるか、あるいは転職、独立の道に向かうのか、自分で自分の人生を自由に選んでいく。 そうすることが、逆に終身雇用制をいきいきとさせる」とにもなるのである。
他の制度が充実していないのにY会社だけをいきなりつくろうとすると、そこだけに高齢者の再雇用問題が集中し、運営上大変むずかしいことになることに注意しておくべきだろう。 他の先進国と違う日本人の労働観ここ数年、当社を視察にくる企業の数がうなぎのぼりに増えた。
大手の銀行、家電メーカーから政府機関にいたるまで、この、三年の聞でざっと四〇〇件以上に及ぶ。 高齢者対策としてYのような組織をつくりたいと模索する企業の数は確実に増え、Y会社への関心はかつてない高まりを見せている。
海外からも韓国、デンマーク、スウェーデン、そしてフランスのテレビクルーや雑誌記者が訪ねてきて、Y社員の働きぶりを取材していった。 お陰でY社員たちはすっかり取材慣れして、カメラマンに向かって、「こっちから撮るといいよ」などとアドバイスする余裕さえ見せている。
ただ、外国に紹介されるのはうれしいことだが、ひとつ心配なのは、その報道のされ方である。 もともと西欧では労働はやむを得ないものというマイナスイメージでとらえられている。
これに対し、日本人は、労働のつらさのなかにも喜びを見出すという違いがある。 その文化の相違から、エル、ダー社員たちの働きぶりが「日本では老人を死ぬまで働かせる」と歪めて伝えられていないかどうか、リリースされたテレビ番組や雑誌をチェックしていないので心配になっている。
それでなくても、海外では「日本人は働きすぎだ」というイメージが広く浸透している。 かつてECの非公開文書のなかで、日本の労働者は長時間労働と低賃金に耐えて、ウサギ小屋に住んでいると批判されたが、そういう視線の根底には、「労働は少しでも軽減するのが人間らしい生き方だ」という西欧流の考え方が投影されている。

そして、その延長線上にあるのが、労働から解放されて、悠々自適の年金生活を送るのが幸せであるという老後観である。 戦後日本が豊かになるにつれ、こうした老後を多くの日本人が理想的な老後生活だと思うようになったのは、しごく当然のなりゆきだ。
バブルのころまで、労働組合が時短をしきりに要求をしたのもこうした背景があった。 経営者のみならず、労働組合もまた高度成長を通して「西欧に追いつけ、追い越せ」というキヤツチアップの思想に漬かっていた。
しかし、高度成長をすでに成し遂げた今日、いまだ、こうした西欧の労働観に支配されているのはどうか。 もっと日本の伝統や国柄に基づいた労働観を模索していくべきではないかと私は思っている。
かつて日本人が徳目としてきた勤労精神はすばらしいことだし、定年後に働き続けることも本人の希望であれば尊重すべきであろう。 労働組合の原則主義はなじまないともあれ、高齢者会社、つまりY会社をつくろうという機運が日本にこれだけ高まっているのは、非常に喜ばしいことだ。
もうひとつだけ助言しておきたいのは、労働組合との関係である。 一言でいうと、労働組合がいたずらに原則論に固執し、会社の経営状況を無視した過剰な要求を突きつけているかぎり、Y会社は設立できないということである。
たとえばいくつかの労働組合で見られるように、「Y会祉をつくるより定年を六五歳まで延長すべき」、あるいは「定年制を撤廃せよ」という要求は、一見、定年退職を間近に控えた高齢社員の声を反映しているように見えるが、実際にはそうではない。 高齢者が個々に思い描いている定年後の人生はじつに多様なのである。
その多様な要求を一つにまとめていくには、むしろ労働組合の役員が「これが七割の人に共通する意見だ」というものをつかむところまで、粘り強く高齢社員の声を聞いていく努力を惜しんではならない。 当たり前すぎるかもしれないが、それができる労働組合であるかどうかが、Y会社設立の大きな分岐点になるのである。
長続きする趣昧は若いうちから探す理想の老後というものは、各人各様のシナリオがあってしかるべきである。 囲碁が好きな人は囲碁三昧の生活を、ゴルフが好きな人は毎日でも*クリーンに出ればよい。
ところが不思議なもので、毎日が日曜日となると、以前はあれだけ楽しみにしていたゴルフが、それほどでもなくなってくる、という人が意外に多い。 じつは、現役時代は忙しい合聞をぬってプレーしたからこそ、ストレスから解放されたのである。

だからよく考えると、ゴルフが三度のメシより好きだったかどうかは定かではないのだ。 カラオケでもジョギングでもよかったかもしれない。
これを趣味と錯覚していると、老後はつらいものになるということが、高齢者会社をみているとよくわかる。 本当に長続きする趣味をもとうとするには、やはり定年前からそれも若いうちから本当に自分に合うものを見出しておく必要があるようだ。
うという悪い癖があった。 文芸評論家の小林秀雄が、私は、若いころから何事も飽きやすい性格で、あれこれ首を突っ込んでは途中でやめてしまなりわいいま生業にしている仕事を「趣味とは、明日やめても、立派に商売になるほどの域に達しているものをいうのだ」と述べているのを知って、趣味とはそんな厳しいものかと驚いた。
盆栽・囲碁から盆石へ中学校では野球をやり、Y電機に入ると野球部、柔道部、陸上部に所属した。

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